傑作「メタルマックス3」の感想と個人的評価

パケ買いした。パッケージがかっこいいから買ったということ。ゲームショップだったか雑貨屋だったかで購入。元から戦車が好きだったのもある。もちろんパケ裏もじっくり見た。

 そのころ自分はドラクエキッズだった。DSでドラクエをプレイしまくっていた。皆さんご存じメタルマックスとはTVCM「竜退治はもうあきた。」のアンチドラクエである(ドラクエ1~3制作スタッフの宮岡氏はこのキャッチコピーには猛反対していたらしいが)。RPGといえばドラクエ、ゲームといったらドラクエ、暇があればドラクエだー!の子供に初めてのメタルマックスを与えたらどうなるか?圧倒的自由度という衝撃が襲うのだ。

 え?メタルスラッグの話?違うの?そんなゲーム初めて聞いたぞ…という読者に説明すると、メタルマックスシリーズとはFC(ファミコン)時代、ドラクエ全盛期にテレビCMで飽きた!とか喧嘩売っちゃうようなFCソフトで、荒廃した世界で化け物が闊歩するいわゆるポストアポカリプス式コマンド型RPGなのだが、初代FC版から自由度が高く、終盤の街までひいこら移動しそこの武器を買い無双、なんてことはもちろん、部屋の模様替え(ゲームで世界初かも)、仲間にするかどうかの選択、そして一番の売りが戦車(通称クルマ)(←え?)と賞金首システムである。ドラゴンクエストとの決定的な違いがこのふたつであり、主人公は金のために敵を倒すモンスターハンター(FCなので当然モンハンより先に使っている)となり、戦いのための乗り物を改造強化、そのためのお金を化け物や犯罪者をぶち殺して得るというのが醍醐味なのだ。ドラクエでは魔王という邪悪を倒すための力が必要で、生身の体を鍛え上げ、ザコ敵から得たお金で装備を整えるという仕組みだが、メタルマックスは強い武器やクルマが欲しい、そのために金が欲しい、だから敵を倒す、という自己中心的な欲望のままに戦うのだ。邪悪が倒され平和になることが「おまけ」なのである。

 ストーリーの序盤を見てみよう。主人公は少年だが初登場時死んでいる!そこを死者蘇生おじさんのマッドサイエンティスト(シリーズおなじみ)が蘇生して始まる。生き返ると記憶が無いし、川から流れてきたという。桃太郎どころかどざえもん。川を辿ればなんか分かるかもね。いってらっしゃい!

わお。もっとこう、綺麗なスタートは出来なかったんすか。ストーリー上必要なのはわかるが、なんか、なんか…。街を出ようとすると黒髪ロング美少女が金髪少年と駆け落ちしようとしている、そこに連れ戻しにきたムキムキマッチョが!諫める主人公とステゴロタイマン!あっさり倒した!あっ強い主人公タイプだ!けれどマッチョの相棒が戦車に乗ってやってきて、名を名乗れと言われる。記憶喪失の主人公はとっさに近くにあったドラム缶を見て偽名を作る。ドラムカン・スミス。もしくはドラムカン・ジョーンズかドラムカン・ジューロ。これをセンスいいかどうかは読者にまかせます。さすがに戦車に喧嘩売るほど馬鹿じゃない主人公はおとなしく去ることに。行かないでドラムカーン!と美少女に言われながら…。後に再会するこの美少女との交流が自分の正体の謎、人生最大の敵に関わっていく…というストーリーである。

自分でも書き起こしてみて思ったが、「変だが王道」である。記憶なく強い主人公、物語の根幹に関わる美少女、強さこそ全ての荒廃した世界。だけどもキャラのセリフの奇天烈な面白さ、どこかとぼけた感じ、戦車には勝てねー!と気持ちよくスタート出来ない感じ。ストーリーはずらしてはいかん部分は理解しつつ、ふざける部分はすっごいふざけてくる。メタルマックスの良さのひとつである。

 本題に入ろう。まず自分なりに評価を下すと、良作で個人的ぶっささり作品だ。ぬるぬる動くドット絵のハイテンポ戦闘、たくさんの楽しいサブクエ、キャラデザも敵含めて素晴らしい。戦車も改造しがいがあり、大砲五門一斉発射!機銃五門もついでに発射!なんて光景はメタルマックスでないとなかなか見られない。住人達の独特な面白さ、賞金首とのギリギリの戦闘はシリーズおなじみの面白さをしっかり引き継いでいる。ロックなBGMも大好きだ。じゃあ問題点はなんなの、と聞かれるとバグ、ストーリーにおいての不便、細かい仕様的不満だ。ストーリーは大方は不満がなく面白い。が、進めるにおいて面倒なお使いが必須。戦闘回数を重ねなければならないものも必須。周回プレイでもこれが響いてくる。しかも個人的にはメインヒロインのコーラが気に入らない。

バグもそこそこあり、仕様も細かいところで不満が出てくる。とくによく取沙汰されるのがシャシー改造が戻せない点だ。このゲームは自分のクルマを改造して強くなっていくゲームなのだが、クルマ本体(シャシー)の改造が不可逆である。たとえば上から大砲機銃機銃と穴に設定すると、もう機銃穴はずっと機銃穴になり、後から大砲大砲機銃にしたくなっても無理である。エンジンを2個載せられるようにすると固定装備が必ずついてくるのもいただけない。しかしこのあたりは次回作以降は改善されているのでいいが、メタルマックス3において一番罪深いと思われるのが装備品の☆についてだ。このゲームの戦車に装備する武器(大砲、機銃、スペシャルイクイップメントことSE)にレア度を表すマークとして☆が三つまでつくことがあるが、これは単純にレア度を表すだけのものではなく、攻撃力に関わってしまうのだ。つまりいいものがドロップした、けれど星二つだから一番ではないね、という嫌な状況に陥る。この悪しきシステムがなんと次回作以降に引き継がれ悪しき風習となり続いてしまった。メタルマックスはハクスラではなくRPGなのに、賞金首などのボスが落とす強い武器は確率で決まる。武器1武器2記念品という三つのドロップで、武器1が欲しければセーブ&リセット、やっと出たかと思ったら☆一つ。そんなシステムがあろうことか続投してしまった。これについては製作者も少しは反省しているのか星固定の装備もある。それでも自分としては星自体をなくしてほしかった。ただでさえとてつもなくドロップ率が低い武器もあるのに、星をいちいち気にしなくてはならないのはストレスだった。

 完璧なゲームとまではいかないが、この作品を気に入りメタルマックスシリーズを買いあさるようになった。その後は他のシリーズファンと大体同じで、2Rの進化に喜び4に驚きゼノで失望した。ポストアポカリプスのゲームがやりたければ他にいくらでもあるし、それこそFalloutでも遊べばいい。しかしなぜ一部のコアなファンが熱狂的に執着し、角川がチャンスを与え、サイゲームスが買収したのか。それはやはりメタルマックスというシリーズが他にない、強烈な何かを持っているからではないだろうか。その一つが反骨心ではないかと自分は思う。今時、他社の人気ゲームに喧嘩を売るような会社は絶対ないだろう。スプラトゥーン、モンハン、ゼルダ、ポケモン。これらのビッグタイトルに「もう飽きた!うちのゲームのほうが新しいシステムで断然面白い!」なんて、口が裂けても言えないゲーム製作者のほうが圧倒的に多いだろう。だがメタルマックスはやった。当時あんなに流行ったドラゴンクエストに。

 今の世の中、自分が作っているものより人気、良いものがあったら、それの良い部分を取り入れたりリスペクトしたりするのが普通で、実際それは賢いし学ぶとはそういうことだ。ただそれは迎合で、いうなれば小さい負け、参りました、従いますといった態度である、とは言い過ぎだろうか。だがそれに対し勝ちたい、ぎゃふんと言わせたいといった気持ちで真っ向から勝負、批判をするような、そんな愚かで怖いもの知らずが持っている熱い反骨心がメタルマックスに滲みこんでいる。だからこのゲームは面白く、しぶとくシリーズが続いているのではないか。だから忘れ去られないのではないか。

 サイゲームスがいったいどんなメタルマックスを作るのか、グラブルのエアロバイスくんと一緒に待つとしよう。

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